江戸の俳諧師の方法に学ぶ。
世界に誇る短詩文芸俳句。その起源は「連句」における最初の句「発句」でした。
座を囲んで、連衆が紡ぐ様々な糸を巧みに捌き、色鮮やかなミクロコスモスを織り上げていく。そこには、過去と未来を見据え、鳥の目と虫の目を駆使し、座したままで壮大な冒険が繰り広げられていました。コトバとコトバの錬金術は、不可視を可視化し、不可能を可能にし、宇宙を産み出しさえしました。
このサイトでは、其角座理事にして俳諧師見習、ヤハギクニヒコ(俳号:道侠)が、アルスコンビネーターとしての視点で俳諧を記述していきます。
NPO法人 座・其角とは。
日本文化の基層には、自他の和を求める心や、人と人とのコミュニケーションを文芸化し、身分を越えて共に風流を楽しむといった、世界に類例の無い俳諧の座という社交文芸の伝統が、つい明治の頃までは在りました。その中でも、其角堂永機の其角座は江戸一番の人気の座でした。かの松尾芭蕉の一番弟子、江戸の俳諧師・宝井其角の弟子達の座です。この其角座を現在に復活させ、継承する目的で 「NPO法人 座・其角」(2010年、其角座継承會より名称変更)は設立されました。
ブログ・座・其角
夕すゞみよくぞ男に生まれけり 其角
皆様、始めまして。
「NPO法人 座・其角」の矢萩と申します。
俳号は「道侠」と書いて「とうきょう」と読みます。
これは『花鳥風月の科学』などの著書でご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、
我が師匠、松岡正剛師より戴いたものです。
その『花鳥風月の科学』という本がきっかけで、
「NPO法人 座・其角」の理事長、二上貴夫師との交流が始まったのが2008年でした。
その年にNPO法人化した其角座に早速参画させて頂き、俳諧のイロハを学ばせて頂いております。
俳諧の方法は、何も文学に限らず、日常、社会生活、あらゆるアートまで応用できる、日本流の発想の型です。とりわけ「連句」は寺田寅彦を初め多くの科学者が注目した、コミュニケーションの極意であり、また世界を呑み込む編集術です。文芸としての愉しみはもちろんのことですが、僕個人としてましては、一人でも多くの方に、俳諧の方法としての素晴らしさを知って頂きたい。そして、あらゆる分野に、その方法を活かして欲しい。そんな思いから、このブログを始めさせて頂きました。
なにぶんまだまだ修業中の身、至らぬ点も多々あると思いますが、
それは一先ず棚に上げさせて頂いて、この場を借りて、みなさんと俳諧を愉しんでいければ、と考えております。既に俳句を嗜んでいらっしゃる方も、ちょっとだけ興味がある方も、たまたまネットサーフィンでたどり着いた方も、
どうぞ、よろしくお願いします。
夕すゞみ長屋を抜けて宇宙まで 道侠
レポート「俳文の未来シンポジウム」
七月二十四日、其角生誕三五〇年記念『俳文の未来シンポジウム』が開催されました。
「俳文コンテスト」は世界ではじめて其角座が仕掛けた「俳文」(※明確な定義はないが、主に俳句と文章からなる短編)のコンテストです。
その授賞式と合わせて行われたシンポジウムとパーティーのため、猛暑の中、沢山の方が新宿は常圓寺に集合しました。
シンポジウムにおいては、審査員及びゲスト各氏による俳文の在り方についての貴重な意見考察がありました。以下、各氏の主要な発言を僕なりにまとめさせて頂きました。
土屋実郎 氏 (其角座伝燈十二世/連句協会顧問)
テンポが大事。どういうイメージが起き、連鎖していくのか、色彩のかわるがわるを意識すべき。
鳴戸奈菜 氏 (現代俳句協会幹事顕彰部長)
俳文は省略の技術。随筆に比べて、短さが必要である。
俳句は必ずしも伝達されなくても可であるが、俳文は伝わらなければならない。
文章である以上伝達は使命である。
湯浅信之 氏 (広島大学名誉教授)
イギリス人に日本の俳文を訳してくれ、と頼まれたが、日本には俳文がない。
日本は文化的にはまだ鎖国状態であると言うことを意識すべき。
日本で書かれたものを外国では読まないし、外国のものもほとんど日本では読まれていない。
スティーブン・ギル 氏 (英語俳人/翻訳家/生け石師)
英語の俳文は、簡潔な分だけではダメで、バラエティー・バリエーションが必要。
くり返しはダメ。リズムを大事に、カッコイイ長文を入れるべき。
須藤徹 氏 (現代俳句協会参与)
俳文は簡潔であるべきだが、簡潔であればいいというものではない。
句があって、それに前書きがある。そのことで立体的になる。
堀切実 氏 (早稲田大学名誉教授)
俳文を意識して作ったのは芭蕉であろうが、芭蕉は定義をしていない。
江戸のものは、文をどう操るかという芸であって、過去の良いものを巧みに織り込んでいく、写生やリアリズムとは対極にある、言わば盗作の連続だった。それが現代の文芸としてあり得るのか。
俳句文芸とは、「文の芸」。それはまさに編集的世界観といえそうです。そもそもオリジナリティだの著作権だの言わないのが江戸の粋なのかも知れませんし、また言われないような配慮や方法、人間性こそが「粋」なのかも知れない、と感じた1日でした。

●「第2回俳文コンテスト入選作品」が掲載された『其角生誕350年記念集』は、東京文献センターより、定価2500円にて発売されております。収録されている「晋翁忌俳諧興行 櫻楓合歌仙晋翁忌の巻」には、僕も参加しています。其角生誕350年記念集

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